歯科矯正は、一般的に自由診療に分類されており、健康保険が適用されるケースは少ないのが現状です。とくに、マウスピース矯正は、審美的な目的で行われる場合が多く、保険の対象外となります。
本記事では、マウスピース矯正が「保険適用外」の理由や保険適用されるケース、費用相場をご紹介します。また、よくある質問も解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
マウスピース矯正が「保険適用外」の理由とは?
歯科矯正は、一般的に自由診療に分類されており、健康保険が適用される場合はほとんどありません。日本では国民皆保険制度があり、病気や怪我などの治療費の一部が保険でカバーされますが、審美目的の治療は対象外です。
このため、マウスピース矯正は、審美的な目的で行われる場合が多く、保険の対象外となります。また、最近では、不正咬合が虫歯や歯周病などのリスクを引き起こすとされており、矯正治療への保険適用を求める声も多いです。
なお、マウスピース矯正については、こちらの記事で詳しく解説しています。
関連記事:マウスピース矯正とは?メリット・デメリットや歯科矯正の流れを詳しく解説します!
マウスピースが保険適用されるケースは3つ
次は、マウスピースが保険適用されるケースについて解説します。
- 先天性疾患による咬合異常の場合
- 永久歯萌出不全による咬合異常の場合
- 顎変形症による咬合異常の場合
それぞれの詳しい内容についてみていきましょう。
1.先天性疾患による咬合異常の場合
歯ぎしりや噛み合わせの異常が原因で歯や顎に負担がかかる場合、マウスピース治療が保険の適用対象となる可能性があります。しかし、このようなケースでも、歯科医師による診断が不可欠です。
また、先天性疾患により噛み合わせが悪くなっている場合も、保険診療の対象となります。たとえば、唇顎口蓋裂やゴールデンハー症候群など、指定された59の疾患に該当する場合、保険適用での治療が可能です。
2.永久歯萌出不全による咬合異常の場合
永久歯萌出不全(えいきゅうしほうしゅつふぜん)とは、通常の生え変わり過程で歯が歯茎のなかに留まっている状態です。この状態が続くと、永久歯の数が不足して、歯並びや噛み合わせに異常が生じます。
具体的には、先天的な理由で永久歯が形成されない場合や、歯茎に埋まったままの状態が原因となります。埋伏歯の場合は「埋伏歯開窓術」という手術が必要で、これに伴う矯正治療は保険が適用される可能性が高いです。
3.顎変形症による咬合異常の場合
顎変形症とは、顎の骨格に異常があり、噛み合わせに問題が生じる病気です。この状態では、顎の位置や形状が正常とは異なるため、咬合不全が引き起こされます。
顎変形症は、先天的な要因や後天的な習癖が原因となる場合が多く、通常の矯正では改善が難しい状態です。こうしたケースでは、外科手術を伴う矯正治療が必要となり、保険が適用される場合があります。
マウスピース矯正にかかる費用は5つ
次は、マウスピース矯正にかかる費用について解説します。
- カウンセリング
- 検査料
- 矯正装置費用
- 診察・通院費用
- リテーナー費用
それぞれの詳しい内容についてみていきましょう。
1.カウンセリング
矯正治療をはじめる前に、現在の歯並びに関する悩みや、理想の歯並びについて歯科医師のカウンセリングを受けましょう。多くの場合、カウンセリングは有料で、費用は0円~5,000円程度が一般的です。
また、初診時には、矯正が必要か、どのような治療が適しているか、治療期間や方法についても確認します。しっかりとしたカウンセリングを受けると、治療計画がスムーズに進みやすいです。
2.検査料
初診後、矯正治療を進めるためには精密な検査が必要です。この検査では、歯型採取や口腔内スキャンを行い、治療後のシミュレーションやプランを作成します。
検査を通じて、治療の仕上がりイメージや具体的な費用、治療期間が明確になります。また、検査には別途費用がかかり、相場は2万~6万円程度です。さらに、検査費用は、矯正治療全体とは別に発生するため、事前に確認しておきましょう。
3.矯正装置費用
歯科矯正で使用するマウスピースの作成には、全体矯正の場合で60万円~100万円、部分矯正では30万円~60万円がかかります。全体矯正では前歯から奥歯まで動かすため、マウスピースの枚数が増え、費用が高くなる傾向があります。
また、クリニックによっては、処置料や観察料が含まれる場合もあるため、料金の内訳を確認することが大切です。また、治療中に追加費用が発生する場合もあるため、事前にしっかりと確認しておきましょう。
4.診察・通院費用
マウスピース矯正中でも、定期的な通院が必要です。次のマウスピースを作成するための歯型採取やアタッチメントの装着、経過観察などが行われるため、通常1回の通院ごとに10,000円程度の診察料がかかります。
この費用は、通院費用や観察料として請求される場合が多いため、治療中にどのくらいの頻度で通院が必要か、予約が取りやすいかを事前に確認しておきましょう。これにより、計画的な治療が進められます。
5.リテーナー費用
矯正治療が完了した後も、歯並びを安定させるためにリテーナー(保定装置)の装着が必要です。この装置を使わないと、歯が元の位置に戻ってしまう可能性が高いため、歯科医師の指示通りに着用しましょう。
リテーナーの費用は6万円前後が相場で、矯正費用とは別にかかります。また、保定期間中も定期的に通院が必要で、1回の通院費用は3,000円~1万円程度です。
なお、マウスピース矯正後に使用するリテーナーについては、こちらの記事で解説しています。
関連記事:マウスピース矯正後に使用するリテーナーとは?種類や注意点、痛いときの対処法を徹底解説!
マウスピース矯正の費用負担を軽減する方法は3つ
次は、マウスピース矯正の費用負担を軽減する方法について解説します。
- 医療費控除を活用する
- 費用が明確なクリニックを受診する
- 治療の範囲を見直しする
それぞれの詳しい内容についてみていきましょう。
1.医療費控除を活用する
医療費控除は、年間の医療費が10万円を超えた場合や、総所得が200万円未満の場合はその5%を超える医療費について、確定申告で一部の税金が還付される制度です。マウスピース矯正治療も、歯並びや噛み合わせの改善が目的であれば、この控除の対象となります。
また、会社員の場合、自分で申告する必要があるため、治療費の領収書や関連書類をあらかじめ準備しておきましょう。これにより、治療費の負担を軽減できます。
2.費用が明確なクリニックを受診する
矯正治療を進める際、歯科医院によっては、治療途中で追加費用が発生する場合があります。このため、矯正をはじめる前に、追加費用がかかる可能性があるか、発生する場合には具体的にどれくらいの金額が必要なのかを確認しておきましょう。
事前に費用の詳細を把握しておくと、予算計画を立てやすくなり、予期しない出費を避けられます。
3.治療の範囲を見直しする
マウスピース矯正では、ワイヤー矯正と同様に部分的な矯正が可能です。部分矯正は、全体矯正よりも費用を抑えられるため、軽度の歯列の乱れがある場合には検討してみましょう。
しかし、部分矯正は適応できる症例が限られており、噛み合わせの問題を改善するのは難しいため、事前に医師と十分に相談しなければなりません。また、予算に合わせた治療計画を立てる際には、希望する結果が得られるか確認してから進める必要があります。
マウスピース保険適用でよくある3つの質問
最後に、マウスピース保険適用でよくある質問について紹介します。
- 質問1.マウスピース矯正費用の支払い方法は?
- 質問2.矯正治療が保険適用される歯科医院の探し方とは?
- 質問3.モニター制度とは?
それぞれの詳しい内容についてみていきましょう。
質問1.マウスピース矯正費用の支払い方法は?
自由診療のマウスピース矯正では、歯科医院によって支払い方法が異なります。多くの医院では、経済的な負担を軽減するために、さまざまな支払い方法が提供されているため、自分に合った方法を選ぶことが大切です。
一般的な支払い方法として「トータルフィー制」と「都度払い制」があります。トータルフィー制では、診断料や調整料、マウスピース代などすべてを含む総額を事前に決めるため、治療期間が延びても追加費用の心配がありません。
一方、都度払い制は、毎回の来院時に調整料などを支払うため、短期間で終わる場合には負担を減らせますが、治療が長引くと総額が高くなる可能性があります。
質問2.矯正治療が保険適用される歯科医院の探し方とは?
保険が適用される矯正治療は、特定の医療機関でのみ受けられるため、すべての歯科医院で対応しているわけではありません。治療を希望する場合は、厚生労働大臣の指定を受け、地方厚生局に認可された指定医療機関で行う必要があります。
また、保険適用の治療を受けたい場合は、指定医療機関を確認して、噛み合わせの問題に適した治療が可能か相談しなければなりません。認定医療機関は、各都道府県の保健福祉局のホームページで確認できます。
質問3.モニター制度とは?
モニター制度とは、クリニックが提供する施術の過程を記録して、その資料提供と引き換えに割引を受けられる制度です。施術中の写真やデータは、クリニックの説明用資料や学会での発表に使用されます。
多くの場合、個人が特定されないように配慮されていますが、事前に確認しておくのが大切です。すべてのクリニックがモニター制度を実施しているわけではないため、興味がある場合は、定期的にクリニックのホームページを確認しましょう。
まとめ
本記事では、マウスピース矯正が「保険適用外」の理由や保険適用されるケース、費用相場をご紹介しました。
日本では国民皆保険制度があり、病気や怪我などの治療費の一部が保険でカバーされますが、審美目的の治療は対象外です。このため、マウスピース矯正は対象外の場合がほとんどですが、先天性疾患や永久歯萌出不全、顎変形症による咬合異常がある場合には、保険が適用されます。
また、費用にはカウンセリングや検査料、矯正装置、診察・通院費用、リテーナー費用などが含まれ、全体的に高額になる傾向にあります。このため、医療費控除の活用や治療範囲の見直し、費用が明確な信頼性のあるクリニックを選ぶようにしましょう。
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