入れ歯が合わない場合、日常生活にさまざまな支障をきたす可能性があります。痛みや違和感を感じるのはもちろん、噛む力が低下したり、発音に影響が出たりする場合も少なくありません。こうした症状は、入れ歯の作りや装着方法に問題がある場合が多いため、適切な対処が不可欠です。
本記事では、入れ歯が合わない場合に現れる症状や合わない原因、対処法を詳しくご紹介します。また、よくある質問も紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
入れ歯が合わない場合に現れる5つの症状とは?
まず、入れ歯が合わない場合に現れる症状について解説します。
- 食べ物を噛むと痛い
- 味や温度を感じにくい
- 吐き気がする
- 外れやすい
- 喋りにくい
それぞれの内容について詳しくみていきましょう。
1.食べ物を噛むと痛い
入れ歯が適切に装着されていないと、口腔内で不快感や痛みが生じる場合があります。正しくフィットしていない場合、歯茎や口腔内の組織に圧力がかかり、痛みや炎症が発生しやすくなります。
さらに、食べ物を噛む際に、入れ歯が歯茎に直接当たり、痛みを伴う可能性が高いです。ひどいケースでは、口内に傷がつき、炎症が広がる可能性もあります。このような症状は、入れ歯が正しくフィットしていないために起こると考えられています。
2.味や温度を感じにくい
全部床義歯(総入れ歯)は、口内の広範囲を覆うため、味覚や温度の感覚が鈍くなる場合があります。特に保険適用の入れ歯はプラスチック素材で作られるため、厚みが出やすく、その影響で温度や味が口内の粘膜まで十分に伝わらないケースも珍しくありません。
そのため、食事をしても味を感じにくくなり、食事の楽しみが損なわれる可能性があります。
3.吐き気がする
入れ歯の装着時に吐き気を感じるのは、主にベース部分が喉に触れてしまう場合に起こります。特に、ベースが長すぎる場合や下の入れ歯に余計な部分がある場合、喉を刺激し、吐き気を引き起こす可能性があります。
こうした問題は、入れ歯のデザインや噛み合わせの調整によって改善できるケースがほとんどです。また、噛み合わせが高すぎると、気持ち悪さが生じる場合もあり、調整によって症状の軽減が期待できます。
4.外れやすい
入れ歯が装着中に外れやすい場合、その原因として床の形状が歯茎に合っていない可能性が考えられます。床と歯茎の間に隙間ができると、しっかりとフィットしないため、入れ歯が外れやすいです。
また、人工歯が高すぎると、噛む力が特定の部分に集中し、その影響で入れ歯が外れやすくなるケースもあります。これらの問題は、入れ歯の調整や修正を行えば改善する可能性があります。
5.喋りにくい
入れ歯が合わない場合、発音に影響が出る可能性があります。特に不快感や痛みがあると、言葉を明確に発音するのが難しくなり、発音が不明瞭になるケースも少なくありません。
また、入れ歯がずれるために話しづらくなったり、口内で音が生じる懸念もあります。さらに、入れ歯のサイズが大きいと、特定の音(たとえば「サ・タ・ラ行」)の発音が難しくなり、慣れるまで発声に違和感が生じる場合があります。
入れ歯が合わない主な原因は3つ
次に、入れ歯が合わない主な原因について解説します。
- 入れ歯の劣化
- 歯茎の変化
- 顎関節の変化
それぞれの内容について詳しくみていきましょう。
1.入れ歯の劣化
入れ歯は、日常の使用や食事によって摩耗が進みます。長期間使用すると、摩耗によって噛み合わせが悪くなり、最終的には新しい入れ歯に交換する必要があります。
また、入れ歯は主に金属やプラスチックで作られており、時間の経過とともに劣化するのが一般的です。特にプラスチック製のものは温度や湿度の影響を受けやすく、変形やひび割れが発生する場合があります。
2.歯茎の変化
入れ歯を装着する際には、歯茎にしっかりと密着させることが重要ですが、年齢や体調の変化により歯茎の状態は変化していきます。特に、歯が抜けた後に歯茎が萎縮する場合が多く、これにより入れ歯との間に隙間が生じる可能性があります。
また、隙間に唾液や空気が入り込み、入れ歯のフィット感が低下してしまい、装着時に安定しなくなるケースも少なくありません。このような状況では、入れ歯の調整が必要になる可能性があります。
3.顎関節の変化
入れ歯は顎の骨によって支えられていますが、年齢とともに顎の骨は新陳代謝が低下し、徐々に痩せていきます。また、入れ歯は噛む刺激を顎の骨に伝えにくいため、骨量の減少が進む原因にもなります。
骨が痩せると、入れ歯と歯茎の間に隙間ができたり、装着時の安定感が失われたりするため、痛みや不快感が生じるケースが多いです。顎の骨の変化に伴い、入れ歯の調整が必要になる場合が多くあります。
合わない入れ歯を使用し続けてはいけない理由は3つ
次に、合わない入れ歯を使用し続けてはいけない理由について解説します。
- 歯ぐきに傷ができる
- 頭痛や肩こりにつながる
- 顎関節症の原因になる
それぞれの内容について詳しくみていきましょう。
1.歯ぐきに傷ができる
合わない入れ歯を使い続けると、入れ歯が口の中でずれて力が不均等にかかり、その結果、歯茎や口腔内の粘膜が擦れ、痛みや炎症が起きる可能性があります。特に、長期間合わない入れ歯を装着していると、口内炎ができるリスクが高まります。
繰り返し同じ箇所に刺激が加わると、歯茎に潰瘍が生じるケースも多いです。こうした症状を防ぐためには、定期的な入れ歯の調整が必要です。
2.頭痛や肩こりにつながる
噛み合わせが合わない入れ歯を長期間使用すると、顎や体全体に負担がかかる場合があります。このような不適切な噛み合わせが続くと、頭痛や肩こりといった症状を引き起こす可能性があります。
また、噛む際に口周りの筋肉が過度に緊張し、顔のバランスが崩れるケースも珍しくありません。さらに、これらの筋肉は頭や肩の筋肉と連動しているため、噛み合わせの乱れが全身の不調に繋がる可能性があります。
3.顎関節症の原因になる
入れ歯が正しく合っていない状態を放置すると、顎関節に過剰な負担がかかり、顎関節症を引き起こす可能性があります。
特に、噛み合わせが悪い場合、片方の顎に負担が集中し、その結果、筋肉のバランスが崩れてしまいます。この状態が長期にわたって続くと、顎関節症のリスクが高まり、口の開閉がしづらくなったり、開閉時に音が出たりするなどの症状が現れる可能性が高いです。
入れ歯が合わない場合の対処法は3つ
次に、入れ歯が合わない場合の対処法を解説します。
- 入れ歯を洗浄する
- 口腔内の状態を確認する
- 歯科医院を受診する
それぞれの内容について詳しくみていきましょう。
1.入れ歯を洗浄する
入れ歯の快適な使用感を維持するためには、日々の清掃が非常に重要です。多くの方が歯ブラシと水で洗浄していますが、入れ歯専用のクリーナーを併用すると、より清潔な状態を維持できます。
専用クリーナーは、通常の洗浄では取り除きにくい細菌や汚れを効果的に除去し、入れ歯の衛生状態を向上させます。これにより、長期間快適に使用でき、フィット感を損なわずに入れ歯の使用が可能です。
なお、入れ歯の手入れについては、こちらの記事で詳しく紹介しています。
関連記事:【基本編】入れ歯の正しい手入れ方法は5つ|間違った仕方や手入れの手順、よくある質問をご紹介!
2.口腔内の状態を確認する
口腔内が乾燥していたり歯肉炎を患っていると、入れ歯のフィット感が低下する可能性があります。乾燥が原因の場合は、水分補給を心がけ、口内を適度に潤すようにしましょう。
歯肉炎が原因の場合は、早めに歯科医院で診てもらうのがお勧めです。軽度の症状であれば、毎日の口腔ケアを徹底すれば改善できる場合もあります。清潔な状態を保ち、入れ歯がしっかりフィットする環境を整えるようにしましょう。
3.歯科医院を受診する
入れ歯の快適な使用を維持するためには、定期的に歯科医院を受診するようにしましょう。入れ歯の調整やメンテナンスだけでなく、口腔内の健康状態をチェックしてもらえば、早期にトラブルを発見できます。
自己ケアも大切ですが、根本的な問題を解決するには専門的な診察が必要です。入れ歯が合わないまま放置すると、口内だけでなく全身の健康にも影響を与える恐れがあるため、異常を感じた際は早めに歯科医に相談してください。
入れ歯が合わないでよくある3つの質問
最後に、入れ歯が合わない場合によくある質問を紹介します。
- 質問1.入れ歯を外して食事をしてもいい?
- 質問2.入れ歯が合わない場合の食事の仕方は?
- 質問3.入れ歯以外の治療方法は?
それぞれの内容について詳しくみていきましょう。
質問1.入れ歯を外して食事をしてもいい?
入れ歯を外して食事をすると、誤嚥のリスクが増加するため注意が必要です。特に柔らかい食べ物ばかり摂取していると、嚥下機能が低下しやすくなります。
また、噛む刺激が減ると認知機能にも悪影響を及ぼす場合があり、認知症が進行すると食べ物を飲み込むのを忘れ、窒息の危険性も高まります。
さらに、入れ歯を外して食べると栄養が偏りやすくなり、体全体の健康に悪影響が出る可能性もあるため、入れ歯は正しく使用するようにしましょう。
質問2.入れ歯が合わない場合の食事の仕方は?
食材を噛みやすくするためには、適切なサイズに切るようにしてください。ただし、食材を細かく切りすぎると、飲み込みにくくなったり、入れ歯の下に詰まりやすくなったりするため注意が必要です。
また、硬すぎる食材は入れ歯に負担をかける場合があるため、調理の際には柔らかさにも配慮する必要があります。さらに、入れ歯を装着していると温度感覚が鈍くなる場合があるため、食事の温度を適切に調整し、火傷に注意してください。
質問3.入れ歯以外の治療方法は?
ブリッジ治療は、失った歯の両隣を利用して人工歯を装着する方法です。両隣の歯を削って土台を作り、その上に人工歯を橋のようにかけます。取り外しの必要がなく、自然な歯と同じように使えますが、周囲の歯に負担がかかる点もあります。
一方、インプラント治療は、顎の骨に人工歯根を埋め込み、その上に人工歯を装着する方法です。しっかりと固定されるため、天然歯に近い感覚で噛めますが、外科的手術が必要となります。
なお、入れ歯とインプラントの違いについては、こちらの記事で詳しく紹介しています。
関連記事:入れ歯とインプラントの違いとは?それぞれのメリット・デメリットや選ぶ際の決め手を解説!
まとめ
本記事では、入れ歯が合わない場合に現れる症状や合わない原因、対処法を詳しくご紹介しました。
入れ歯が合わない状態では、日常生活にさまざまな影響を及ぼす可能性があります。痛みや違和感、噛む力の低下、発音の問題など、さまざまな症状が現れるリスクが高まります。
これらの症状は、入れ歯のフィット感や劣化、歯茎や顎関節の変化によって引き起こされる場合が多いです。合わない入れ歯を使用し続けると、歯ぐきに傷ができたり、頭痛や肩こり、顎関節症を引き起こす原因にもなりかねません。
そのため、入れ歯の快適な使用を維持するためには、日々の清掃や口腔内の状態の確認、定期的な歯科医院の受診が不可欠です。入れ歯に関する疑問や不安がある場合は、早めに専門医に相談し、適切な対処を心がけてください。
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