「奥歯は目立たないから大丈夫」と、奥歯を失ったまま放置する方は少なくありません。しかし、奥歯は食事や会話において重要な役割を担っており、放っておくと歯並びにも影響をあたえます。
本記事では、奥歯の持つ役割や失ったまま放置するリスク、奥歯に入れ歯を入れるメリット・デメリットを解説します。費用目安も紹介するので、入れ歯治療を検討している方はぜひ参考にしてみてください。
奥歯の入れ歯について知っておくべき3つのこと
奥歯の入れ歯について知っておくべきことは主に次の3つです。
- 奥歯の持つ役割
- 奥歯を失ったまま放置するリスク
- 奥歯の入れ歯の種類
それぞれの内容について詳しくみていきましょう。
1.奥歯の持つ役割
奥歯は、食べ物を「かみ砕く」ために必要ですが、それだけでなく、日常の動作や体のバランス維持にも密接に関わっています。
身体全体に力を伝える際、たとえば重い物を持ち上げるとき、奥歯はその強い力に耐えることができるように噛む面が広く、2〜3本の根っこを有しています。さらに、左右の顎の関節を過度な負担から保護する役割も担っているのです。
奥歯により、噛む力や顎の噛み合わせが正しく機能します。特に、歯並びの中心から数えて6番目に位置する第1大臼歯は、噛む力が最も強いとされ、歯並びの基盤的存在です。
一方、奥の位置にある奥歯は手入れがしにくいことから虫歯になりやすく、また、噛む際の大きな負担から抜けやすいという特性があります。このため、日々の歯の手入れや定期的な歯科チェックが重要です。
2.奥歯を失ったまま放置するリスク
奥歯は目立ちにくいため、欠如を軽視してしまうかもしれません。しかし、奥歯を失ったまま放置すると、さまざまなリスクが生じるので注意が必要です。
まず、残った歯へ噛む力が集中するため歯を支える骨が痩せてしまい、歯がぐらついた結果として抜けてしまう場合があります。また、歯の移動により噛み合わせも次第にずれ、虫歯の原因や歯並びの治療が追加で必要となる可能性が高まります。
噛む際に頬の近くで活動する咬筋という筋肉は、奥歯がないと十分に使われず、筋肉の衰えから顔がたるむ原因のひとつです。食べ物をしっかりと噛み砕けないため、胃腸にも負担がかかります。
さらに、奥歯が持つ身体のバランスを維持する機能の喪失により、姿勢の悪化を招き、肩こりや頭痛が生じることも考えられます。したがって奥歯を失った場合は、早急に適切な治療を受けるのがおすすめです。
3.奥歯の入れ歯の種類
入れ歯は、大きく分類すると「部分入れ歯」と「総入れ歯」の2種類となります。部分入れ歯は、歯の一部が失われた場合に選択され、総入れ歯はすべての歯が失われた場合の選択となります。
入れ歯の選択は、患者の希望や経済的な側面を考慮しながら、最適な種類を選びましょう。入れ歯には主に「保険診療の入れ歯」と「自費診療の入れ歯」の2つの選択肢があります。
次のページでは、入れ歯の主な種類や特徴を解説します。入れ歯の種類があわない場合の対処法も紹介するので、「入れ歯にどんな種類があるのか」「どの入れ歯が自分に適しているか」お悩みの方はぜひ参考にしてみてください。
関連記事:【プロが解説】入れ歯の主な種類は8つ|材質や特徴、入れ歯の種類が合わない場合の対処法もご紹介!
奥歯に入れ歯を入れる3つのメリット
奥歯の役割や失ったまま放置するリスクが理解できたところで、次は奥歯に入れ歯を入れるメリットを紹介します。主に次の3つです。
- 保険が適用される場合がある
- 取り外しできるため手入れしやすい
- 要望に合わせた治療ができる
それぞれ詳しくみていきましょう。
1.保険が適用される場合がある
入れ歯の種類や症状に応じて保険の適用が考慮されます。「レジン床義歯」と呼ばれる入れ歯は、歯ぐき部分がプラスチック製で、金属パーツで隣接する歯に固定する仕組みです。このタイプの入れ歯は保険が適用されるため、治療費が比較的安価になるメリットがあります。
しかし、レジン床義歯は噛むときの感触が硬かったり、厚みが原因で口の中で浮いてしまったりなどのデメリットもあるため、治療を検討する際には十分な情報収集と注意が必要です。
2.取り外しできるため手入れしやすい
入れ歯は取り外しできるため、日常のお手入れが簡単に行える点が大きなメリットとして挙げられます。この特性により、口腔内を常に清潔に保つことができ、ブリッジやインプラントに比べて衛生的に使用可能です。
また、入れ歯を常時装着する必要がないため、好きなタイミングで使用できます。初めて入れ歯を装着する際は、痛みや違和感を感じることがあるかもしれませんが、装着時間を少しずつ調整しながら慣れていきましょう。
なお、次のページでは、入れ歯の正しい手入れ方法や手順を詳しく解説しています。あわせて参考にしてみてください。
関連記事:【基本編】入れ歯の正しい手入れ方法は5つ|間違った仕方や手入れの手順、よくある質問をご紹介!
3.要望に合わせた治療ができる
入れ歯は適用範囲の広さから、要望に合わせて治療が可能です。特に部分入れ歯は、さまざまな口腔状態に対応できるため、ブリッジ治療が難しい場合でも治療することができます。
さらに、入れ歯治療は外科手術や健康な歯を削るリスクが少ないため、安全性の面でも他の治療方法に比べて優れていると言えます。このように、入れ歯は患者の要望や口腔の状態に応じた、最適な治療を提供することができるのです。
奥歯に入れ歯を入れる3つのデメリット
奥歯に入れ歯を入れるメリットがある一方、デメリットが生じることも把握しておきましょう。主に次の3つが挙げられます。
- 噛む力が弱くなってしまう
- 違和感を感じやすくなる
- 虫歯や歯周病のリスクが高くなりやすい
それぞれ詳しくみていきましょう。
1.噛む力が弱くなってしまう
入れ歯は、噛む力が弱くなってしまう点がデメリットのひとつです。特に保険適用の入れ歯は、プラスチックと金属金具を主体にしており、強度に制限があります。本数にもよりますが、噛む力は約4割まで低下してしまうと言われています。
奥歯の入れ歯は、ブリッジやインプラントと比べてしっかりとした噛み心地を得るのが難しいのが現状です。噛む力や審美性が気になる場合、自費治療になりますが、金具のない入れ歯やセラミックブリッジ、インプラントなどの選択肢を考慮してもよいでしょう。
また、入れ歯を初めて装着する際は、噛み合わせが馴染んでいないため、硬い食べ物は避けることを推奨します。
2.違和感を感じやすくなる
保険適応の入れ歯は、主材料にプラスチック樹脂を使用しています。適切な強度を確保するには義歯床部分を厚く作る必要があり、違和感を生むデメリットの要因となりかねません。
たとえば、発音に影響をあたえたり、食事の際に食べ物の温度を正確に感じにくくなったりと、違和感を覚えるケースが挙げられます。
3.虫歯や歯周病のリスクが高くなりやすい
入れ歯は、隣接する自然歯の間に食べ物の残りや歯垢が溜まりやすくなるため、虫歯や歯周病を引き起こすリスクが増加します。細菌が蓄積することで、歯や歯茎の健康を害する可能性が高まるのです。
入れ歯を使用する方は、日常の歯磨きや手入れを十分に行うことが大切です。なお、弊社では、歯科技工士が考えた入れ歯洗浄剤「入れ歯想い」をおすすめしています。
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奥歯の入れ歯治療にかかる費用目安
保険の入れ歯は、使用する材料や治療内容に決まりはありますが、健康保険の適用により治療費はほぼ均一化されています。そのため、特定の歯科医院に縛られず、安心して治療を受けることが可能です。
一方で自費診療の場合、費用は歯科医院や使用する材料、施術者の技術レベルなどにより、大きく変動します。一律の料金設定ではないため、各歯科医院の詳しい料金を事前に確認しましょう。
なお、次のページでは、保険適用と自費診療それぞれの入れ歯の値段相場を紹介しています。あわせて参考にしてみてください。
関連記事:保険適用になる入れ歯の値段相場を解説|値段に違いがある理由やよくある質問もご紹介します!
奥歯の入れ歯でよくある3つの質問
ここでは、奥歯の入れ歯でよくある質問にお答えします。
- 質問1.テレスコープ(コーヌスクローネ)入れ歯とは?
- 質問2.奥歯の部分入れ歯に慣れるコツは?
- 質問3.奥歯が抜けてしまう主な理由は?
それぞれの内容について詳しくみていきましょう。
質問1.テレスコープ(コーヌスクローネ)入れ歯とは?
テレスコープ(コーヌスクローネ)入れ歯は、歯の残存部分を調整し、内冠(金属のかぶせもの)を装着し、その上に外冠として入れ歯を固定する仕組みです。主なメリットには、次の5つが挙げられます。
- バネの使用がなく、見た目が自然で美しい。
- 安定した固定機能により、食事時の咬み応えが自然である。
- 汚れが付着しにくい。
- 維持や修理がしやすい。
- 就寝時の取り外しが不要である。
この方法は歯の削り直しが伴うため、完成までには一定の時間が必要となります。なお、歯がほとんど残っていない状態の患者には適応できない場合があります。
参考:保険外の入れ歯 岩手医科大学 歯科補綴学講座 有床義歯補綴学分野
質問2.奥歯の部分入れ歯に慣れるコツは?
奥歯の部分入れ歯に早く慣れるためには、発音練習は欠かせません。とくに、上の前歯の裏側を覆うタイプの入れ歯は、サ行やタ行の音が発音しにくくなりがちです。
克服するために、「タチツテト」や「サシスセソ」などの言葉を使って練習するのがおすすめです。音読や歌を歌う練習を積むことで、発音の改善につながり、入れ歯への適応も早まります。
次に、食事の選択にも注意が必要です。新しい入れ歯の装着直後に硬い食べ物を食べるのは避け、最初は軟らかい食べ物を選ぶよう心がけましょう。
歯茎に慣れていない状態で強く嚙むと、痛みや傷の原因となる可能性があるためです。通常、1〜2週間の適応期間がたつと、さまざまな食事を楽しめるようになります。
質問3.奥歯が抜けてしまう主な理由は?
奥歯は食べ物を噛む際に最も強い力がかかる部位です。この強い咀嚼力の影響で、奥歯は他の歯よりも抜けやすくなります。
また、奥歯の位置が奥深いことによる手入れ不十分により、虫歯になるリスクが高まり、治療の必要性が増します。しかし、不十分な虫歯治療や治療後の咬み合わせの不調和は、奥歯にさらなる負担をもたらし、歯の損失や破損の原因となることが多いです。
虫歯治療後に咬み合わせに違和感を感じた場合は、早急に歯科医に相談し、咬み合わせを再確認してもらいましょう。
まとめ
ここまで、奥歯の持つ役割や失ったまま放置するリスク、奥歯に入れ歯を入れるメリット・デメリットを紹介しました。
失った奥歯をそのまま放置した場合、歯並びが崩れたり、虫歯・歯周病リスクが増大したりなど、噛む力以外にも影響をあたえます。放置せず、入れ歯治療を検討しましょう。
なお、入れ歯における保険診療や自費診療という選択肢は、それぞれ独自の利点がある一方で慎重に考慮すべき点もあります。自分の口腔の状態や生活環境にあわせて、入れ歯を選ぶことが大切です。
まずは歯科クリニックでのカウンセリングを受け、適切なアドバイスを受けることをおすすめします。
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