口臭は多くの人の悩みであり、その原因のひとつには、歯周病が深く関連しています。歯周病は歯肉の炎症が進行すると、歯周ポケットと呼ばれる歯と歯肉の隙間ができ、そこに細菌が繁殖して悪臭が発生するのです。
この記事では、歯周病による口臭の原因や特徴、予防策まで詳しく解説します。口臭の悩みを抱えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
口臭と歯周病は関係している?
口臭はさまざまな原因によって引き起こされますが、その中でも歯周病との関連は深いとされています。歯周病は、30代以上の約80%の日本人が悩まされている口腔疾患です。
歯周病の原因になる嫌気性菌は酸素の少ない環境を好むため、歯と歯肉の隙間にある歯周ポケットで繁殖しやすく、バイオフィルムという膜をつくり炎症を引き起こします。また、嫌気性菌が活発になると揮発性硫黄化合物を生成し、口臭のもとになってしまうのです。
口臭の原因は4種類
口臭の原因は大きく4つに分類されます。
- 生理的口臭
- 外因的口臭
- 心因性口臭
- 病的口臭
項目ごとに詳しくみていきましょう。
1.生理的口臭
生理的口臭とは、健康な人でも朝起きたときや空腹時に一時的に発生する口臭のことを指します。この口臭は、夜間に唾液の分泌が低下することで口腔内の自浄作用が低下し、細菌が増殖して引き起こされます。
生理的口臭は、食事をしたり水分を補給すれば改善されるのが特徴です。適切な手入れで、生理的口臭を防ぐことができます。
2.外因的口臭
外因的口臭とは、口腔内の細菌以外の原因により発生する口臭のことを指します。主な原因には、次のようなものが挙げられます。
喫煙 | タバコの煙には口臭の原因となる有害物質が含まれているため、喫煙習慣のある方に多く見られます。 |
飲酒 | アルコール飲料には口臭を引き起こす揮発性の物質が含まれています。また、お酒は唾液の分泌を抑制するため、細菌が繁殖しやすくなります。 |
食生活 | ニンニク、ラー油、カレー粉などの強い香りを持つ食品の摂取後は、一時的に口臭が発生しやすくなります。 |
薬の副作用 | 一部の薬剤は副作用として口臭を引き起こすことがあります。代表的なものとして、降圧剤や制吐剤などがあげられます。 |
外因的な口臭は、原因となっている生活習慣や食事内容を改善することで、比較的簡単に解消できるものが多いのが特徴です。
3.心因性口臭
心因性口臭とは、口腔内の原因ではなく、心理的なストレスや不安などの精神的要因により生じる口臭のことを指します。口臭検査で口臭が認められなくても、本人が強く意識して過剰に気になってしまうのが特徴です。
心因性口臭の原因としては、次のようなことが考えられます。
- ストレスによる自律神経の乱れ
- 強迫神経症などの精神疾患
- 口臭への過剰な注目・強迫観念
対処法としては、カウンセリングなどで不安を取り除くことが大切です。
4.病的口臭
病的口臭は、一時的なものではなく、強烈で持続する臭いが特徴です。口腔内のトラブルとしては、歯周病や虫歯、古い入れ歯・詰め物、舌の汚れが臭いのもととして挙げられます。
また、消化器系や呼吸器系の疾患、口腔がん、肝機能の低下、糖尿病、便秘など、体の不調も口臭を引き起こす原因となります。
歯周病による口臭の特徴
歯周病が進行すると、さまざまな悪臭が口から発生するようになります。代表的な3つの臭いは、次のとおりです。
- 腐った玉ねぎのようなにおい
- 腐った卵のようなにおい
- 生ゴミのようなにおい
項目ごとに詳しくみていきましょう。
腐った玉ねぎのようなにおい
歯周病による口臭として代表的なのが、「メチルメルカプタン」という揮発性硫黄化合物が原因の臭いです。メチルメルカプタンは、腐った玉ねぎのような特徴的な臭いがあります。
また、毒性が強く、歯周病の進行を促進することも知られています。治療を必要とする重要なサインとなるため、早期の予防対策が重要です。
腐った卵のようなにおい
腐った卵が発するにおいと類似しているのが、「硫化水素」という揮発性硫黄化合物です。
硫化水素は、歯垢から発生するだけでなく、舌の表面に形成される舌苔にも多くみられます。そのため、生理的口臭の原因としても大きな割合を占めています。
生ゴミのようなにおい
生ゴミや腐ったキャベツに似た臭いを放つ「ジメチルサルファイド」という揮発性硫黄化合物も、歯周病による口臭原因のひとつです。磯の香りのもとになっている成分のため、海苔のにおいにも含まれています。
なお、ジメチルサルファイドによる口臭は、口腔内の問題のみとは限りません。消化器系や肝臓の疾患などの疑いも考えられるので、専門家に受診しましょう。
歯周病による口臭の治し方と予防策
気になる口臭は、毎日の手入れで改善できます。ここでは、歯周病による口臭の治し方と予防策を紹介します。
- 毎日歯磨きする
- 薬効成分入りの歯磨き粉・洗口液を使う
- 歯周病治療を受ける
- 定期的に歯のクリーニングを受ける
それぞれの内容について詳しくみていきましょう。
1.毎日歯磨きする
口臭や歯周病を予防するには、毎日の歯磨きが何より大切です。正しい方法で毎日最低2〜3回、食後や就寝前に歯磨きするのが理想的です。
また、歯ブラシを使うだけでは、歯間の細かい汚れや歯垢を完全に除去することは難しいため、歯間ブラシやデンタルフロスの使用をおすすめします。これにより、虫歯や歯周病の主な原因となる細菌の増殖を抑えることができます。
さらに、舌が清潔であることも口臭予防には重要なため、1日1回舌ブラシを活用するのもよい方法です。
2.薬効成分入りの歯磨き粉・洗口液を使う
歯磨きをするときは、薬効成分入りの歯磨き粉を使用するのがおすすめです。これらの歯磨き粉には歯周病予防に効果的な成分が含まれており、歯周病菌の活動を抑制することが期待できます。
また、洗口液も同様に予防効果のある成分が配合されている製品があります。歯磨き粉と洗口液を組み合わせて使い、歯周病予防の効果をさらに高めましょう。
3.歯周病治療を受ける
口臭の問題を根本から解決するには、歯周病治療を受けることが最善の方法です。早期に治療を始めることで、病気の進行を防ぎ、結果として口臭の発生も減少します。
歯医者が苦手という人も多いですが、早めに治療すれば痛みを感じることはありません。適切な治療を受けて、健康な口腔内環境を保ちましょう。
4.定期的に歯のクリーニングを受ける
自宅での日常的な手入れは重要ですが、自分でできることや市販の製品では限界があります。歯科医院で、定期的に歯のクリーニングを受けましょう。
このクリーニングにより、歯周病の予防や進行を効果的に抑制することができます。特に歯周ポケット内の汚れは、自分ではなかなか取り除くことが難しいため、3ヶ月に1回の頻度で歯科医院を訪れるとよいでしょう。
口臭や歯周病でよくある3つの質問
最後に、口臭や歯周病でよくある質問にお答えします。
- 質問1.そもそも歯周病とは?
- 質問2.自分の口臭を確認する方法は?
- 質問3.口臭を自分では気づけない理由は?
それぞれ詳しくみていきましょう。
質問1.そもそも歯周病とは?
歯周病とは、歯肉や歯周組織に炎症が起こる病気のことです。主な原因は歯垢の付着によるものです。
歯垢は細菌の塊で、放置すると歯肉に炎症を引き起こします。この状態を「歯肉炎」と呼びます。歯肉炎が進行すると、歯周ポケット(歯と歯肉の間の隙間)が深くなり、やがて歯を支える骨までも溶けてしまう「歯周炎」に移行します。
重度の歯周炎が放置されると、最終的に歯を失う恐れがあります。そのため、定期的な歯科検診で早期発見・早期治療に努めることが大切です。
質問2.自分の口臭を確認する方法は?
口臭は自己認識が難しいため、他人からの指摘を受けて気付くケースや、口臭を過度に心配し過ぎることで、コミュニケーションに対して不安を感じるようになるケースもあります。
歯周病の症状がみられる場合は、客観的に口臭の有無を判断するとよいでしょう。
次のページでは、自分の口臭をチェックする方法やニオイの原因、口臭対策を詳しく解説しています。口臭にお悩みの方は、ぜひあわせて参考にしてみてください。
関連記事:自分の口臭をチェックする方法5選|ニオイの原因や口臭対策もご紹介します!
質問3.口臭を自分では気づけない理由は?
自分の口臭に気づきにくい理由は、私たち人間の環境の臭いに慣れやすい特性によるものです。そのため、歯周病などで発生する口臭も、日常的にその臭いにさらされ続けることで感覚が鈍くなり、自己認識が難しくなります。
この「臭いへの慣れ」は進化に有利なメカニズムとも言えます。周囲の変化に敏感である一方で、持続的かつ無害な刺激には順応することで、より重要な環境の変化に注意を払うことができるからです。自分自身の口臭を感じにくいのは、とても自然な現象なのです。
まとめ
歯周病による口臭を根本から改善するには、歯周病そのものの治療が不可欠です。歯周病が進行すると、歯周病菌から放出される揮発性硫黄化合物により、口臭が悪化する恐れがあります。
また、自宅での歯ブラシやデンタルフロスを使用した毎日の手入れも重要です。口臭の原因に対して効果的にアプローチすることで、口臭は改善されます。
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