入れ歯の材質や形状によっては汚れや臭いが付着しやすくなり、適切な手入れを怠ると口臭の原因となる場合があります。そこで本記事では、入れ歯における臭いの原因やいやな臭いを防ぐ対処法を詳しく解説します。また、入れ歯の臭いでよくある5つの質問も紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
日本人の多くは自身の口臭に気付いていない
歯ぐきの健康を通じたカラダ全体の健康を推進する団体「オーラルプロテクトコンソーシアム」が在日外国人100人と20~40代の日本人の男女計600人に実施したオーラルケアの実態に関する意識調査によると、在日外国人の約72%が「日本人の口臭にガッカリした経験がある」と回答しました。
また、約7割の在日外国人が日本人に口臭予防のためのオーラルケアを徹底してほしいと感じているようです。一方、日本では歯周病が成人の8割に影響しているものの、同調査における600人の回答者の約9割は「自分が歯周病ではない」との認識を示しました。
このギャップから、多くの日本人が自身の口臭や口腔の健康問題に気付いていない可能性が高いことが考えられます。さらに、入れ歯を装着している場合の口臭問題は深刻です。
入れ歯の材質や形状によっては、汚れや臭いが付着しやすくなり、適切なケアを怠ると口臭の原因となる可能性が高まります。特に、部分入れ歯は形状が複雑で汚れが付きやすく、適切に手入れをしないと強い臭いの原因となるため、注意が必要です。
参考:オーラルケアの実態に関する調査>口臭の大きな要因は歯周病による“歯ぐき臭”!?在日外国人の約4割が「東京オリンピックに向けて
入れ歯における臭いの原因は5つ
入れ歯における臭いの原因として、次の5つが挙げられます。
- 金具と歯の間が汚れている
- プラスチック素材の入れ歯を使用している
- カンジダ菌による口内炎を起こしている
- 唾液の分泌量が減少している
- 入れ歯自体が破損している
いずれも入れ歯をしている方が注意すべきものばかりです。原因ごとの詳しい内容を解説します。
1.金具と歯の間が汚れている
部分入れ歯は、金属のバネ(クラスプ)で歯に引っ掛けて装着されることが多いです。しかし、この金具と歯のすき間は通常のブラッシングだけでは十分に掃除ができず、プラークが溜まりやすい箇所となっています。
そのため、金具と歯の間には汚れが蓄積しやすく、臭いの原因となるケースがあります。また、ブリッジの治療法では、義歯を「橋のように」渡して装着しますが、この義歯と天然の歯の境目にもプラークが溜まりやすく、同様に臭いの元となる場合があります。
2.プラスチック素材の入れ歯を使用している
部分入れ歯やブリッジ、総入れ歯などの保険を使用した入れ歯の主成分は「レジン」と呼ばれるプラスチック樹脂で作られています。レジンはコストパフォーマンスに優れるだけでなく耐久性が高く、適切な手入れと管理によって長持ちするのが特徴です。
しかし、レジン素材は柔らかいため傷がつきやすく、さらに水分を吸収するという性質があります。この性質は、悪臭の原因となるバクテリアやプラークの付着を助ける要因となります。
3.カンジダ菌による口内炎を起こしている
歯垢や歯石を放置すると、入れ歯に付着する菌の種類や量が増加します。中でも「カンジダ菌」というカビの菌が増殖しやすく、これが口内炎や口臭を引き起こす可能性があります。
さらに、合わない入れ歯を使用し続けていると、金属部分が粘膜に接触して傷や潰瘍を引き起こして口内炎となり、その結果として口臭に影響するケースも少なくありません
4.唾液の分泌量が減少している
唾液は口内において、食物の消化の開始や湿潤の維持、自浄作用といった役割を果たしています。特に、自浄作用は口内環境を清潔に保つうえで欠かせない要素です。
しかし、入れ歯が適切にフィットしていない場合は正しく噛むことができなくなります。唾液腺を刺激して唾液を分泌させるきっかけとなる噛む動作が難しくなると、唾液の持つ自浄作用が十分に働かず、口内の雑菌がたまりやすくなるのです。
これらの雑菌は、口内環境が悪化すると繁殖しやすくなり、その結果として入れ歯や歯肉に不快な臭いの原因となります。
5.入れ歯自体が破損している
入れ歯は衝撃や圧力に弱く、強く噛むや落とす、高温や低温にさらされるといった外部の要因によって、亀裂やヒビが入る場合があります。ただし、日常的に使用している中で生じる小さな割れやヒビなどは、その初期段階では気づきにくいケースが多いです。
しかし、このような小さな割れやヒビは、食べ物の残渣や口内の雑菌が侵入する入り口となります。そして、雑菌が割れやヒビを通じて入れ歯の内部や表面に侵入し、口内環境の悪化や口臭の原因となる場合も少なくありません。
入れ歯のいやな臭いを防ぐ5つの対処法
入れ歯の臭いにはいくつもの原因があることが理解できたところで、次はいやな臭いを防ぐ対処法を紹介します。主な対処法は次の5つです。
- 毎日のお手入れを徹底する
- 正しいお手入れ方法を取り入れる
- 大部分が金属で出来ている入れ歯を使用する
- 歯科医師に相談する
- 専用の入れ歯洗浄剤を使用する
それぞれの詳しい内容についてみていきましょう。
1.毎日のお手入れを徹底する
入れ歯に付着する食べ物のカスや歯垢(デンチャープラーク)を毎日のブラッシングと洗浄剤への浸け置きで除去することで、いやな臭いの発生を防ぐことが可能です。
ただし、洗浄剤は毎回新しいものを使用し、使い回しは避ける必要があります。もし、複数の入れ歯をお持ちの場合はまとめて洗浄するのではなく、個別での手入れが推奨されます。
さらに、一部の入れ歯は洗浄剤の使用によって亀裂が生じる可能性があるため注意が必要です。なお、弊社では全ての入れ歯に使用できる入れ歯洗浄剤とマウスピース洗浄剤を発売しています。
歯科技工物のことを知り尽くした歯科技工所である弊社が提供する「入れ歯想い」について詳細情報が気になる!という方は、以下の商品ページをぜひチェックしてみてください。
2.正しいお手入れ方法を取り入れる
正しいお手入れ方法を取り入れることも入れ歯のいやな臭いを防ぐ対処法の1つといえます。正しい手入れの流れは次のとおりです。
- 毎日のお手入れ:入れ歯は細菌がたまりやすく、毎食後に磨くことが理想的。無理な場合は、少なくとも就寝前にしっかり磨く。
- 汚れやすい部分への注意:部分入れ歯の形状は複雑で、特に歯と歯の間や入れ歯の裏側、金属のバネ(クラスプ)部分は汚れやすいので注意深く磨く。
- 正しい入れ歯の洗い方:入れ歯を外してから洗う。入れ歯専用の歯ブラシを使用して、水またはぬるま湯を出しながら全体を磨く。外した後の自分の歯も磨く。
- 入れ歯洗浄剤の使用:磨き終えた入れ歯を入れ歯洗浄剤の溶液に毎日浸けることで、除菌効果が期待できる。
なお、次のページでは、入れ歯の正しい手入れ方法についてさらに詳しく解説しています。また、間違った仕方や手入れの手順も紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
関連記事:【基本編】入れ歯の正しい手入れ方法は5つ|間違った仕方や手入れの手順、よくある質問をご紹介! – 歯科技工所|株式会社シケン コラム
3.大部分が金属で出来ている入れ歯を使用する
保険診療で製作した入れ歯は特に汚れが付着しやすく、入れ歯の臭いが気になる場合は、金属の入れ歯がおすすめです。金属の入れ歯も保険適用の入れ歯と同様に、毎日の歯磨きや寝る前の洗浄は必要なるものの、きちんと手入れを続けていれば臭いを気にすることなく使い続けることができます。
また、強度にも優れる金属製の入れ歯は口にフィットしやすく、強い力で咬みしめれる点も大きな特徴の1つです。
4.歯科医師に相談する
もし入れ歯を毎日きちんと手入れしても、口臭が気になるという方は、入れ歯だけが原因ではないかもしれません。口臭の主な要因として、歯周病や口腔乾燥症などが影響しているケースがあります。
そのため「自身での手入れでは改善されない」や「ブリッジの部分がなんとなく臭う」といった場合には早めに歯科医院へ訪れ、専門家の意見を求めるようにしてみてください。
5.専用の入れ歯洗浄剤を使用する
総入れ歯と部分入れ歯は、その材質に大きな違いがあります。総入れ歯は主にプラスチック素材でできているのに対し、部分入れ歯には金属とプラスチックの部分が組み合わされています。
この材質の違いに応じて、使用すべき入れ歯洗浄剤も異なります。適切な洗浄剤を選ばないと、入れ歯を洗浄できないだけでなく、長期的に口臭に悪影響を及ぼす可能性があります。そのため、入れ歯の材質に合わせて専用の洗浄剤を選ぶことが大切です。
なお、次のページでは入れ歯洗浄剤における「部分入れ歯」と「総入れ歯」の違いについて解説しています。また、目的別の選び方やおすすめの洗浄剤も紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
関連記事:入れ歯洗浄剤における「部分入れ歯」と「総入れ歯」の違いは?目的別の選び方やおすすめの洗浄剤をご紹介! – 歯科技工所
入れ歯の臭いでよくある5つの質問
入れ歯洗浄剤の部分入れ歯用の違いでよくある質問として、次の5つが挙げられます。ここでは、それぞれの質問についてわかりやすく回答します。
質問①入れ歯の種類とは?
入れ歯の種類は大きく「保険適用」と「保険適用外」に分かれます。保険適用の多くはレジン(歯科用プラスチック)製で 審美性が高く、金属アレルギーも起こさず安心して使用できます。しかし、吸水性が高く、変色・破損しやすい点には注意が必要です。
一方、保険適用外の入れ歯は費用が高いものの、審美性が高い材料を使用して精密に製作しているのが特徴です。主な種類として、次の5つが挙げられます。
種類 | 特徴 |
金属床義歯 | 生体親和性の高い金属を使用。食感や発音が良好。金属アレルギーの人には不適。 |
ノンクラスプデンチャー | バネ(クラスプ)がなく、審美性が高い。 |
シリコーン義歯 | シリコーン使用で衝撃を緩和。ただし、調整が難しい。 |
磁性アタッチメントデンチャー | 歯根に磁性体を埋め込み、磁石を持つ入れ歯を装着。磁力で安定して噛むことが可能。 |
インプラントオーバーデンチャー | あごの骨にインプラントを埋入して入れ歯を装着。フィット感は良いが、手術が必要。 |
質問②差し歯のあたりが臭う原因は?
差し歯あたりからの匂いの原因としては、主に次の3つが考えられます。
原因 | 内容 |
二次カリエス | 差し歯の下で新たな虫歯が発生。歯と被せ物の間に隙間ができ、そこから虫歯菌が入り込み匂いを発生させる。特に、神経を取った歯は痛みを感じにくく、二次カリエスに気づきにくい。進行すると抜歯の可能性も。 |
歯と差し歯の間の汚れ | 歯と差し歯の間に食べかすや汚れが溜まっている状態。臭いだけでなく、歯ぐきの腫れや出血も起こすケースもある。 |
歯周病 | プラークが歯周病の原因となり、それにより歯ぐきに炎症が起きている。歯周病が進行すると、強烈な匂いが発生する。歯肉炎がさらに進行して歯周炎になると、歯周ポケットが深くなり、それがさらに口臭の原因となる場合も。 |
質問③口臭の原因を防ぎやすい「オールオン4」とは?
入れ歯ではないものの、口臭の原因を防ぐ方法として「オールオン4」もあります。オールオン4とは、4本のインプラントを顎骨に埋め込み、上部に人工歯を設置する治療法です。オールオン4が口臭の原因になりにくい理由として次の3つが挙げられます。
- チタン製の安定した土台がある
- 傷や汚れの付着が少ないセラミックを使用している
- 入れ歯よりも清掃しやすい
これらにより、口臭を引き起こす汚れの蓄積が抑制できることから、オールオン4は口臭を防ぎやすいとされています。
質問④レジンの入れ歯が臭う理由は?
レジンの入れ歯は、歯ぐきに触れる「床」と呼ばれる部分がプラスチック樹脂で作られています。このレジンは特有の吸収性があるのが特徴です。
そのため、唾液を吸収しやすく、さらに汚れが付着しやすくなります。その結果として、劣化が起こりやすく、臭いの原因となるのです。
質問⑤入れ歯でお手入れで絶対にやってはいけないことは?
入れ歯でお手入れで絶対にやってはいけないことに、次の4つが挙げられます。
- 熱湯による洗浄や浸け置き:変形や変色の原因となる。
- 漂白剤を使用する:変色や変形の原因となる。
- 長期間の未使用状態で放置する:乾燥してひび割れる恐れがある。
- 通常の歯ブラシや研磨剤入りの歯磨き粉で磨く:入れ歯や金属部分に傷や変形の原因となる。
なお、次のページでは就寝前に入れ歯を手入れする際の流れを詳しく解説しています。ぜひこちらも参考にしてみてください。
関連記事:入れ歯(義歯)洗浄剤の正しい使い方は5ステップ|注意すべきポイントやよくある質問もご紹介! – 歯科技工所|株式会社シケン コラム
まとめ
一見清潔に見える入れ歯であっても、目には見えない細菌が多く付いています。さらに、入れ歯には、総入れ歯や部分入れ歯などさまざまな種類があり、材質や構造にあった適切な手入れが欠かせません。
しかし、弊社では「どんなタイプでも心を込めて作った入れ歯を長く使っていただきたい…!」という想いから種類に関わらず、全ての入れ歯に使用できる入れ歯洗浄剤とマウスピース洗浄剤を発売しています。
歯科技工物のことを知り尽くした歯科技工所である弊社が提供する「入れ歯想い」について詳細情報が気になる!という方は、以下の商品ページをチェックしてみてください。
コメント